PDCAというけれど
仕事の進め方について「基本は◯◯」という形で、英単語の頭文字をつなげた言葉がよく使われます。以下にいくつかの例を紹介します。いずれも元々の意味は色々で、工場の生産管理や企業経営などで使われていた考え方です。
それを後世の別の人が「この言葉は違う分野にも応用できる」と解釈をし、それをさらに別の人がさらに違う分野にも当てはめる…ということを繰り返していくうちに、一般的なあらゆる仕事の基本的な進め方をあらわす言葉として使われるようになりました。
〔PDCA〕 Plan:計画 Do:実行 Check:評価 Action:改善
〔PDS〕Plan:計画を立てる Do:実行する See:振り返る
〔PDR〕Prep:準備する Do:実行する Review:見直す
このような言葉は他にもたくさんあります。
また、これらの後ろにサイクルという言葉を足して「PDCAサイクル」という呼び方をされることもあります。PDCAであれば、P→D→C→Aときて、Aからまた次のPに進む。このサイクルをクルクルと回し、継続的に仕事の品質を高めていくことが大切だと言われています。
ただ肝心なのは中身です。PDCAやPDRという言葉だけを覚えても意味がありません。例えば…
「Plan」や「Prep」と言われても
仕事は、準備や計画が大事だと言われます。しかし実際に何をすればいいのかがわからないと、以下のような事が起こってしまいます。
・教わった通りにきちんと計画を立てて、計画通りに仕事をしたのに、やり直すように言われた。なぜやり直しなの?
・Planが大事だと言われたので、苦労して計画書を作っていたら、「そんなのに時間をかけないで、さっさとやりなさい」と言われた。Planって無意味なの?
・ちゃんと仕事をしたのに「期待していたイメージと違う」と言われた。「でも私はこうだと思いました」と言ったら「言い訳するな!」と怒られてしまった。どうすればいいの?
「Do」と言われても
Doは仕事の実行中を指す言葉です。新人教育などでは、仕事の実行中の注意点として「報連相(ほうれんそう:報告、連絡、相談)」という言葉も合わせて教えることが多いようです。ただし言葉を知っているだけではうまく進められないこともあるということは一緒です。
・「仕事の報告はタイミングよく」と言われたので、自分なりにタイミングを見計らって報告したら「何でもっと早く報告しないの?」と言われた。いいタイミングっていつのこと?
・困って相談したら「自分で考えろ」と言われた。今度は、相談せずに自分で考えていたら「なんでもっと早く相談しないんだ」と言われた。じゃあ、一体どうすればいいの?
「Check」「Action」「Review」など
これらはどれも、仕事が終わった後の見直し、振り返りに関する言葉です。どの言葉を使ったとしても、仕事はやりっぱなしではいけないということは共通していそうです。
・「仕事を終えたら、必ず振り返りをするように」と言われた。でも、何をどのように振り返ればいいのかわからないから、何もできない (何もしない)。
・配属前の研修の時は、講師や他の受講者が細かく評価してくれたので改善点に気づくことができた。でも職場では、上司や先輩があまり評価してくれないので改善点に気づけない。
・私の働きぶりについて、上司や先輩は何も言ってこない。ちゃんと貢献できているのだろうか? 何だか自信が無くなってきた…
・いつも似たようなミスをしてしまうが、いつまで経っても改善できない。一体何が悪いのだろう?
・対策を立てろと言われても「次は気をつける」しか思い浮かばない。対策は具体的にと言われても、どうしたらいいのかわからない。
・上司から「去年担当した仕事の経験を活かせ」と言われたが、前とはちょっと違うタイプの仕事だし、何をどう活かせばいいのだろう?
以上のような、仕事を進める中でのさまざまな「実際に起こりそうな事」は、PlanやCheckなどの単語を知っているだけでは、解決するのは難しそうです。
目の前にある自分の仕事をちゃんと進めていくためには、一体いつ、何を、どうすればいいのか? それを理解するために必要なのは、PDCAなどの“大枠だけを示したあいまいな言葉”ではなく、もっと解像度が高くて実際の仕事に役立つ、具体的な考え方や言葉です。
本書はそれをお伝えするために作られました。これから、以下の3つの場面に分けて、順番に解説していきます。
・仕事の「準備」の場面
・仕事の「実行」の場面
・仕事の「振り返り」の場面
・本ページは、書籍「詳解 仕事の進め方 」の内容の一部を限定公開しているページです。他の公開中のトピックは「目次」から確認してください。