OJTというけれど

ある会社のマネージャーが、

「私の会社の場合、OJTはOn the Job Trainingの略ではなくて、(O)お前ら・(J)自分勝手に・(T)適当にやれ、の略なんですよ」

と言っていました。(胸を張って言うことではありません)

そもそもOJTとは何か?
OJT(On the Job Training)は、職場での実務を通して仕事に必要な知識や技術を指導することを示す言葉です。いつからOJTという言葉が使われるようになったかははっきりしていませんが、第一次世界大戦中の米国の造船所における指導方法がルーツだという説があります。

OJTは「何でもいいから、簡単な仕事からやらせてみようか」というような場当たり的なものではなく、意図的・計画的・継続的に行うことが重要だと言われてきました。どのような人材に育てていくのかを明確にし、どのような仕事をどのような順番で与えるのかという長期的な計画を立て(大企業であれば数年単位の異動のプランも含めて)、さまざまな人や部署と関わり合いながら継続的に育成していく。OJTは戦後の高度経済成長期の日本の中でスタンダードな人材育成手法として広がっていきました。長期雇用が前提となっていたから、うまくいっていたという意見もあります。

それが近年なかなか機能しなくなり、上述の「お前ら・自分勝手に・適当にやれ」の状態になっているとしたら、その理由は何か? いろいろ話を聞いてみると、以下のような原因が挙げられました。

・ビジネス環境の変化が激しくて、長期的な育成計画が立てにくくなった

・「プレイングマネージャー」が当たり前になり、教える側も自分の仕事で忙しく、じっくり指導する時間が取りにくくなった

・本人の成長に合わせて都合よく仕事が用意できなくなった。昔だったら「失敗してもいいからやってごらん」と自由にやらせていたような小さな仕事まで「絶対に負けられない戦い」となり、上司が細かく管理しなくてはいけなくなった。

・社内の上司や先輩の持つ「正しいやり方」自体が通用しなくなり、そもそも何を正解として教えればいいかがわからなくなった。

では、どうすればいいでしょう?

「適当にやれ」がいけないからといって、手取り足取り指導すればいいかというとそうでもありません。何から何まで懇切丁寧に教えてしまうと、自分で考えなくていいということを学習してしまいます。その結果、

「教わっていないので、できませんでした」

「この会社は、私をどう成長させてくれるのですか?」

という受け身で他責な発言があたりまえになってしまっては困ります。

そこで提案したいのが、仕事の中身だけではなく、仕事を通じた「成長の仕方」についても指導やサポートを行うというアプローチです。魚を代わりに釣ってあげるのではなく、魚の釣り方を教えてあげるようなものです。

部下に指導するためには、まずはマネージャー自身が「成長の仕方」についてよく知っておく必要があります。同じ仕事から多くのことを学んで成長していく部下とそうでない部下がいるとしたら、何が違うのでしょうか。

・本ページは、書籍「部下の自立を引きだすための マネージャーの言語化支援」の内容の一部を限定公開しているページです。他の公開中のトピックは「目次」から確認してください。

「部下の自立を引きだすための マネージャーの言語化支援」
A5判 156ページ ¥1,800(税別)