覚え書き

当社書籍を用いたオンライン研修での発見を中心に

オンライン研修のオリエンテーション

研修の開始時から本編に入るまでの「オリエンテーション」。休憩時間や昼食を含めたタイムテーブルや、飲み物の持ち込み、使用する物といった事務的な連絡をしたり、人事部門からの研修の主旨や期待などの説明、講師や受講者同士の自己紹介なども行ったり。およそ30分程度でしょうか。合宿形式の長めの研修ではじっくり1時間くらいかけて行うこともありました。

自分はオリエンテーションの目的は「受講者が安心して研修の中身に取り組むことができる環境を整えること」だと思っています。余計な不安や緊張感は取り除く。その一方で、興味を持って集中して取り組んでもらうための「心地良い緊張感」をつくりだす。

後から知ったのは、自分が最初に教わった流派(?)がたまたまそういう考えだっただけで、世の中には別の流派もあるということ。受講者同士が仲良くなるためにクイズやゲームを必ずやるという団体や、いきなり本編に入って受講者を翻弄するようなスタイルも見たことがあります(敢えてそうしているのかも)。講師としてのポジショニングのために職歴や実績を並べて受講者を圧倒させるというスタイルを初めて見た時は「すげー!!」と憧れて、こっそり自分の研修でマネしてみたこともありました(失敗しました)。色々な流派があることを知りましたが、最初に教わった流派の教えを今でも変えずにやっています。

オンライン研修は、オンラインという形態そのものが不安要素です。講師も受講者も、研修を主催する人事部門も、大丈夫かな?急に繋がらなくなったらどうしよう?とソワソワした感じで始まります(でも場所はみんなバラバラだからソワソワした空気感は無くて、変な感じ)。当面はそのような状態が続くでしょう。

回を重ねるにつれて、受講者がどのあたりに不安を感じるかがわかってきました。Zoomを使う研修では、研修内で使用する機能は最初に一通り説明するようになりました。チャットも「ここのボタンを押すとウインドウが開きます」から始まり、「初めての人もいますよね。じゃあ試しに好きな食べ物を入力してみてください」という練習もやってみました。受講者の年齢層が上がるにつれて「魚」と書く人の割合が増えます(実話)。

事前に簡単な「自己紹介シート」を作ってもらい、それを画面共有機能を使って他の人に見せながら自己紹介をし合うということもやってみました(受講者数が多いときはブレイクアウトルーム機能を使って1グループ3〜4人に分かれて実施)。箇条書き程度でも情報を用意した方が相手によく伝わるようです。

「今後は社内会議などの知った相手同士のやりとりだけではなく、初対面の人とオンラインで自己紹介し合うという機会も増えていく可能性があります。だから今のうちに色々試してみましょう。文字情報や、場合によっては図や写真を画面に出しながら説明した方がよく伝わるのであればそうすればいいのです。少しずつ『自己紹介用の自分の1ページ』を更新させていけば、後々、研修以外の場面でも役立つかもしれませんよ」そんなふうに伝えると、よしやってみるかと挑戦してくれる受講者は多いです。

Zoomの投票機能を使って受講者に色々な質問を投げかけ、その場で集計結果を見せるということもやりました。「今、どこから参加していますか?」「オンライン会議の経験はどのくらいありますか?」「オンライン飲み会の経験はありますか?」などなど。他の受講者のこともわかると「自分だけじゃ無いんだ」と安心する人もいるようです。投票機能はオリエンテーション以外の場面でも有効だと思いました。いずれ別の記事でも取り上げます。

言われて確かにそうだなあと思ったのが「講師の目線」です。自分の顔なんて大きく見せても仕方がないので、できるだけ進行用のPowerPointスライドを画面共有で表示させるようにしています。それでも小さい枠で講師の顔は映るわけで、受講者は講師の目線が気になるのです。最初に少し説明するようにしました。「こっちを見ている時はPCの時計を見ています」「下を見ている時は『次は何を説明するんだっけ』というカンペを見てます。不機嫌そうに見えるかもしれませんが、それは元々そういう顔なので気にしないでくださいね」とか。

みんながオンラインのコミュニケーションに慣れていくにつれて、このような細かい説明は要らなくなるでしょう。しかし当面の間は、余計な不安を取り除くために丁寧に説明していこうと思っています。早く慣れていくといいなと思いつつ、今のちょっとした高揚感(みんな初めてだし多少のトラブルは許容してチャレンジしていこう感)が徐々に無くなっていくのはちょっと寂しいなという気もしています。

(2020.10.15)

「成長のための言語化」シリーズ