マネージャーの成長と言語化
本トピックでは、部下ではなくマネージャー自身の成長と言語化について考えてみます。
マネジメントのやり方開発
やりながら、より良いやり方をつくることが求められているのは部下だけではありません。マネジメントのやり方についても同様です。 マネジメントについては、世の中に多種多様なパブリックセオリーが溢れていて、どれを信じればいいのかわからなくなるほどです。その時々のビジネス環境に応じて、「率先して前に進み背中を見せるマネジメントがいい」とか「マネージャーは後ろから部下を支えるべき」とか「今は二人三脚型のマネジメントの時代だ」など、流行り廃りが見られます。
当然どれが一番正しいということはなくて、事業の内容や方針、職場環境、部下の人数や能力、そしてあなた自身の特徴などによって最適なやり方は変わってくるのだと思います。いずれにせよ、自分なりのやり方はどんどん編み出して、引き出しを増やしていくべきです。マネジメントのやり方はゴルフクラブのようなものです。色々な種類のクラブを持っていれば状況に応じてどれを使えばいいか選ぶことができますが、ドライバーしか持っていないと、グリーンでもバンカーでも使わなければいけません。
同じ立場のマネージャー同士で、持論について対話したことはありますか? 手に負えない部下についての愚痴の言い合いだったり、板挟みの辛さを励まし合うだけだったり、プレイヤーの頃を懐かしむだけだったりしませんか? 同僚に弱みを見せたり、協力し合ったりすることをあまり望まない人もいるでしょう。しかし現場は、あなたがより良いやり方を開発するまで待ってくれるわけではありません。
部下への自己開示
マネージャーは、全てにおいて部下より優れていなければならないという時代ではありません。ある分野や業務については部下の方が詳しくて遂行能力も高いということは十分あり得ます。
マネジメントに自信が無い人は、マネージャーとしての弱点を克服することだけに目を向けず、自分の強みや特長をどう活かしていくかを考えてみましょう。あなたの弱みは部下に補ってもらえばいいのです。そのための権限は与えられているはずです。
少し勇気が要ることですが、できるだけ自分の事を部下に知ってもらいましょう。自分の強みや弱み、得意な事や苦手な事、仕事の何に夢中になりやすく、何を不安に思っているのか。今、自分はどんな事に挑戦しているのか。自分なりのマネジメントのやり方を、どこから、どんなふうに創り上げていきたいと考えているのか。
見せたくない部分もあるでしょうが、それも含めて開示してしまった方が、部下はあなたの事を正しく理解できますし、あなたに協力しやすくもなります。それに返報性と言いますが、こちらから開示してしまった方が、部下もあなたに対して色々な事を開示しやすくなる気持ちが働きます。部下のことをもっと知りたいのであれば、まずはあなたのことを部下にもっと知ってもらいましょう。
ビジョンや方針の言語化
「従業員満足度調査」のような、社員の声を集める施策を取り入れている企業の多くで言われているのが、「マネージャーがビジョンや方針を示してくれない」ことを不満に感じる部下が増加しているということです。ただ、これはマネージャーも辛いでしょう。先が見えにくくなり不安を感じているのは部下もマネージャーも一緒です。どうなるかなんて誰もわからないのに、ビジョンなんて示せるわけがない。
それでも、示さなくてはいけないのがマネージャーです。
半年後や1年後、あるいはもっと先、あなたは自分の担当する部署やチームをどういう状態にしたいと思っているのか。最低限どんな状態にしたいか。自分の描く最高の状態はどのようなものか。
目指す状態の実現に向けて、自分は部下と一緒に何に挑戦したいか。どんなことを大事にし、何を始め、何を終わらせるか。
言葉にして発信することで、部下から反応が返ってきます。
「それなら、私はこういう形で協力できると思います」
「こんな要素も目標に入れてみてはいかがでしょうか」
「こういうやり方で挑戦してみませんか」
必ず返ってくる保証はありません。
でも発信しない限り、可能性はゼロです。
ビジョンや方針を示さないマネージャーに部下たちが不満を持つのは、有り余る自分の力をどこに向ければいいかがわからないからです。
自分で考えた「目指す状態」を部下に示す際に、主義とか信念とか一貫性とか、ぶれない軸のようなものを持っていない事を恐れる必要はありません。ずっと同じであり続ける必要はないのです。
「今の想い」を言語化すればいい。部署やチームの役割について今はどう考えているか。今は何が大切だと思っているか。以前と変化したのであれば「昨年はこう思っていたが今は違う」ということを言葉にして部下に伝えます。
どんな言葉で、どのように伝えれば、自分の想いが部下にちゃんと届くのか。それはやってみないとわかりません。部下の言語化を支援しつつ、自分自身の言語化能力を更に磨いていってください。
・本ページは、書籍「部下の自立を引きだすための マネージャーの言語化支援」の内容の一部を限定公開しているページです。他の公開中のトピックは「目次」から確認してください。