きちんと段取りをつけるとは?
ゴールイメージを明確にして発注者とのすり合わせが終わったら、あとは実行あるのみです。すぐに取りかかれるような短期間でシンプルな仕事の場合はそれでいいのですが、より期間が長く、より複雑(難易度が高い/関係者が多い等)な仕事の場合は、具体的な作業にとりかかる前に考えることがあります。
たくさんの作業の中で、何から手をつければいいか。どの順番で進めていくか。途中で作業が止まってしまう可能性はあるか。あとで困らないように準備しておくことは何か。いつ、誰と、何について話し合っておけばスムーズに仕事が進むか。
これらを検討して整理することを一般的に「段取り」と呼びます。
段取りは、もともと歌舞伎の構成や展開のことを示す言葉だったといわれています。今ではもっと広く、さまざまな分野で物事を行う順序や手順、準備のことを指す言葉として使われています。よく「準備8割(成功するかどうかの80%は準備で決まる)」と言いますが、同じ意味で「段取り八分・仕事二分」という言い方もあります。
段取りという言葉も、わかったつもりになりやすい言葉です。もう大丈夫と思っていても、いざ個別の作業にとりかかってみると、まだまだ不十分だったということもあります。そのような時に言われる言葉は、例えば以下のようなものです。
「このままじゃ終わらないよ、どうするの?」
「今になってそんな事言われても困るよ」
「どうして◯◯を先にやっていないの?」
「時間管理ができていないんじゃないの?」
「仕事の優先順位、ちゃんとわかってる?」
「どうして◯◯さんに一声かけておかないの!」
「先に◯◯課を通さないと…もう間に合わないよ」
これらの台詞は、たいていの場合「そう言われても、もう手遅れです」というタイミングでしか登場しません。このようなことを言われないようにするためには、何をすればいいのか?
「段取り」という言葉をさらに分解してみましょう。あなたの仕事における「きちんと段取りがつけられた状態」とは、下記のことを全て終えた状態のことです。
ステップ1:下地を整える
ステップ2:仕事を分解する
ステップ3:時間を見積もる
ステップ4:スケジュールに組み入れる
ステップ5:発注者と調整・合意する
その日のうちに片付けられるような、簡単な仕事ばかりを与えられているうちは、上記のような段取りはそれほど必要ではありません(万が一この段階で苦労しているならば、段取りではなく「ゴールイメージ」を正しく理解できていない可能性があります)。
しかし簡単な仕事だけをやっていればいい時期はすぐに終わります。次第に段取りの必要な仕事(時間のかかる仕事や、作業が多く複雑な仕事)が与えられるようになります。すると、急に納期が守れなくなったり、ミスや見落としが増えてしまったりする人がいます。
「ちょっと面倒な仕事になっただけで、仕事の効率がガクンと落ちてしまう…」そのような人は、上記のうちステップ1~3がおろそかになっている可能性があります。
そして、仕事は次々にやってきます。「この仕事を終えるまで、次の仕事が待ってくれる」というのは無理な話。終わらないうちに次の指示が来たり、新しい仕事に取りかかってまもなく別の仕事の依頼が来たりします。
1つ1つの仕事を単独であればうまくできるのに、同時並行になった途端にパニックになり出来なくなってしまう。そのような人は上記のステップ4~5あたりをおろそかにしている可能性があります。
各ステップの詳細は以降のトピックで、順にご紹介します。
「段取り」と「優先順位」
仕事の計画、段取り、準備といったことが語られるとき、「優先順位づけを明確に」と言われることが多いです。仕事の重要度や緊急度をはっきりさせて、どれから先にやるか、どれを後回しにするかを直ちに判断し、効率的に進めましょう、という具合です。
確かにそうなのですが、実際に働いている人に話を聞いていると、一番多いのは「どれも重要で緊急度が高い時はどうすればいいのでしょうか」という質問です。そうなんです。あなたに与えられる仕事は、全部重要で、しかも緊急。
「そうは言っても、もう時間が無い。どっちをやるか、どっちを諦めるかを決めないといけないんです」…実際に優先順位づけが求められるのは、そういう差し迫った場面です。ほとんどの場合、上司に相談して決めてもらうことになるでしょう。
そして、基本的に段取りというのは、そういう差し迫った場面が起こらないようにするためのものです。うまく段取りがつけられれば、優先順位で悩むことはなくなります。
段取りは、いつ行えばいいのか?
その仕事に取りかかるのは後であっても、段取りだけはすぐにやっておきましょう。理由は三つあります。
一つ目の理由は「段取りをつけてみないと、実行可能かどうかがわからない」からです。仕事を分解して時間を見積り、スケジュールにあてはめてみたら、とても期限に間に合わないことがわかった、という場合があります。後になってからの「やっぱり無理です」は最も迷惑な行為です。
二つ目の理由は「早い段階で不明点を明らかにしておく」ためです。段取りをするだけでも多くの事をチェックできます。不明点は早期に解決しておくべきです。後になって解決したい時に、解決してくれる人がそばにいるとは限りません。
三つ目の理由は「次の仕事を受けられる状態にしておく」ためです。段取りがつかないうちに、次の仕事の指示を受けるかもしれません。段取りをつけておかないと、スケジュールに余裕があるかどうか正しく判断することができません。
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