やりながら、より良いやり方をつくる

さまざまな企業の、さまざま職種に共通してみられたのは、

繰り返す人:ただ言われた通りにやっている
積み重ねる人:やりながら、より良いやり方をつくっている

ということでした。
「より良いやり方」と言われると、何を想像するでしょうか。
たとえば、以下のような日常の仕事でのささやかな工夫です。

・記録用紙に確認項目を1つ付け加えたことで、点検作業のミスを減らすことができた

・説明の順番を少し変えてみることで、お客様に商品の良さが伝わりやすくなった

・事前に◯◯について話をしておくことで、資料作成時間を縮めることができた

もっと大きな仕事や役割でも一緒です。
たとえば研究の進め方、後輩指導の仕方、企画の作り方、チームのまとめ方など。成功や失敗を重ねながら、自分なりのより良いやり方を編み出していきます。

さらに「業界初の新規事業の立ち上げ」のような仕事も含まれます。まだ誰もやったことのない仕事について、正しいやり方を知っている人は存在しません。あらゆるやり方を自力で開発しなくてはなりません。

やり方が変わることによって、ミスが減ったり、やり直しの時間が少なくなったり、品質が安定したり、相手により喜んでもらえたり、さまざまなかたちで仕事の結果も変わります。

結果が変わることで、その仕事の担当者としての信頼が高まり、仕事を任せてもらえる期間や、実行時の自由度も変わります。さらに「次はこれを任せてみようかな」と、よりレベル(責任範囲や、難易度や、報酬単価など)の高い仕事の機会と巡り会う可能性も増します。

機会が得られたら、今度はその新しい仕事について、やりながらより良いやり方をつくる。その積み重ねが、時間が経つにつれて大きな差となっていきます。

いま、働き方は多様化しています。1つの仕事を継続して専門性を深く掘り下げ極めていく人もいれば、複数の仕事を経験することで対応できる範囲を広げていく人や、できることの組み合わせによってユニークな特徴や強みを生み出している人もいます。いずれの働き方であったとしても、やりながらより良いやり方をつくり続け、長く成長していくことが求められるというのは一緒です。

それは、今のやり方をその通りやり続けていれば問題ないと判断されるような「きっちり手順が定まった仕事」の多くは、自動化されたり、社内の人件費より安い、外部のサービスに委託したりするようになったからです。

この先、人に残された仕事の大部分は、やり方が定まっておらず白黒はっきりしないグレーゾーンだらけの仕事や、工夫や改善の余地がまだたくさん残されている仕事ばかりになるかもしれません。すでにいくつかの業種では作業の大部分が機械化されて、人間の主な役割が「より良いやり方を探り、発見し、つくり出すこと」になりつつあります。

・本ページは、書籍「長く成長していくための 仕事における言語化能力」の内容の一部を限定公開しているページです。他の公開中のトピックは「目次」から確認してください。

「長く成長していくための 仕事における言語化能力」
A5判 155ページ ¥1,800(税別)