導入事例
お客様の声をご紹介します
株式会社富士通マーケティング様
「どんな本にも書かれていない『俺の背中を見て覚えろ』で済ませてきた部分が、きちんと言葉になっている。やっと見つけた! と思いました」
株式会社富士通マーケティング BPR推進本部 窪田智子氏に、「詳解 仕事の進め方」を自社の社員教育に取り入れた経緯や、得られた効果などについて詳しく伺いました。
〔株式会社富士通マーケティングについて〕
コンサルティングから機器販売、ソフトウェア開発、設備工事、保守までの一貫したサービスを提供する富士通グループの中核会社。1947年設立、従業員数3,707名(連結/2013年3月末)
「教える側」「教わる側」双方のストレスを取り除きたい
ー まず初めに、どのような経緯で本コンテンツと出会われたのかを教えていただけますか?
以前、私は人材開発部門に所属していました。その当時の仕事の1つに「新入社員教育の見直し」があり、新たに取り入れたいコンテンツや切り口を求めて情報収集をしていました。
どうしても見つからないコンテンツがありました。
いくつか大きな書店を回ったのですが適切な書籍も無く、Amazonで検索しても見当たらず、社員研修サービスを提供している会社にあたってみても、なかなかピンと来るものに出会えない。それが「仕事の進め方」でした。
ー なぜ「仕事の進め方」に関するコンテンツを探していたのですか?
従来までの新人教育では「コミュニケーション」「ロジカルシンキング」「ビジネス文書」といった各分野の研修は一通りそろっていました。しかし、それらは全て仕事をする上での手段、道具の1つです。そうではなく、それらの前提となる「そもそも仕事はどうやって進めていくの?」という部分がすっぽり抜けていました。
よくよく考えてみると、<指示を受ける><振り返る>といった当たり前のことについては、配属後の現場任せでした。「やりながら慣れていけ」「背中を見て覚えろ」という具合です。
その結果、現場では教える側と教わる側の両方にストレスが溜まっていました。
昔であれば新人とじっくり向き合う時間がとれたかもしれませんが、今は上司や先輩も自分の仕事に追われています。そんな中で、面倒を見ている新人が基本的なところでつまづいていると、ついイライラしてしまうものです。
「基本がなってない」「意識が足りない」「もっと気を配れ」
といった言葉が飛び交うわけですが、新人はそれだけではわかりません。
「基本というのは、こういうことだと思っていました」
「私なりに意識したつもりだったのですが」
と言い返したい気持ちをグッとこらえ、新人もまたストレスを溜めていく(笑)
「背中を見て覚えろ」は必要。ただし言語化してから
ー そのような「お互いのストレス」を解消するための鍵が「仕事の進め方」にあると。
はい。もっと正確に言うと「仕事の進め方の言語化」になると思います。
私たちの会社での「指示を受ける」や「振り返る」とはどういう意味か。
ただこなすだけではなく、経験からきちんと学ぶとはどういうことか。
自力で乗り越えてほしい事は何で、逆に遠慮せずに周りに助けてもらうべき事は何か。
そこまで言語化することができれば、新人も自力で自分の動き方をチェックし、改善することができます。ポイントや考え方が新人と指導者の「共通言語」になっていれば、指導の負担も減ります。
ー すると、仕事に関するあらゆる事が「言語化」された状態が理想的なのでしょうか。
いいえ、全てを言語化するのは現実的ではないと思います。たとえば「お客様に対する姿勢」や「情熱」「使命感」といったものは、文字にしようと思っても難しいでしょう。
でも、そういった言語化しにくい事こそ本当は大事であり、上司や先輩の働きぶりから感じ取り、学んでもらいたいのです。「背中を見て覚えろ」は必要です。ただ、仕事の進め方のような、言語化できる部分は背中を見ずともさっさとクリアしてもらいたい。そんな所でつまづいてほしくない。上司や先輩の背中からしか学べないことに注意を向ける時間を、もっと増やしてほしくて。
以上のような経緯で、仕事の進め方や学び方についてきちんと言語化されたコンテンツを探していました。
ー 書店のビジネス書コーナーなどに、役立ちそうな本がたくさんありそうな気もしますが?
最初はそう思っていましたが、いざ手に取ってみると以下のような感じで、なかなか見つかりませんでした。
・そもそも「新入社員向け書籍」が少ない。マナーや文書の書き方ばかり
・それらしい事が書いていても発行年が古く、具体例がピンとこない
・「PDCAを回そう」としか書いていない。
・一見使えそうだが、「時間管理」や「段取り」などに偏っている
・新しい本だが「スマホ活用」などのライフハック的な要素が強い
そんな中でこの本を見つけた時は、「やっと見つけた! 欲しかったのはこれ!」と思いました。「ゴールイメージ」「一次納期と最終納期」「進捗報告の信号の色」「3点セット」「部分の観察」など、このぐらいの細かさでたくさんのポイントが言語化されていれば、きっと新人にも上司・先輩にも役に立つと考えました。
当時、私自身が同じ部署の若手社員の育成担当者になっていました。
早速本の内容を他のメンバーと共有し、業務の中で使ってみることにしました。
「ゴールイメージは何?」の一言でOK
ー 実際の指導の中で使ってみることで、どのような変化がありましたか?
「共通言語」の威力を実感しました。期待はしていましたが、これほどコミュニケーションが楽になるとは思いませんでした。
今までだったらうまく言葉にできずに流していたり、逆に細かく詰め過ぎていた事でも、「ゴールイメージは何?」とか「信号の色は何色なの?」といった言葉を使うと、簡単に論点をすり合わせることができますし、自分で考えさせることができるようになりました。
次第に若手社員の方からも「黄色だと思っていましたが、赤信号でした。理由は…」とか「すると一次納期は◯◯でいいでしょうか?」という形で自分で考え、話しかけてくれるようになりました。
同じような体験を、他の社員にもしてもらいたい。
このような経緯で社内の研修の中に少しずつ取り入れていきました。
質問が「いやらしく」なった。想いが伝わった。
ー どのように社内の研修の中に取り入れたのでしょうか。
ロークワットに支援をいただきながら、以下の研修プログラムをつくりました。
<配属前の新入社員研修>
・仕事の進め方1:「仕事を受ける」編(1日間)
・仕事の進め方2:「仕事を進める」編(1日間)
・仕事の進め方3:「仕事を振り返る」編(1日間)
<新人を指導する育成担当者向け>
・トレーナー研修(1日間)
それぞれ本の内容をベースにして、理解を深めるための練習や対話の時間を盛り込んだプログラムにしました。新人向け研修と育成担当者向け研修で使っている言葉は統一し、現場での共通言語として使いやすいようにしました。
ー 研修は、意図通りの効果を生み出しましたか?
まず新人向け研修のほうから説明します。
当社の新人研修には、実際の仕事の練習としての「業務シミュレーション」が盛り込まれています。研修スタッフが発注者の役を担当し、新人がチームを組み、数週間をかけて仕事を進めていきます。
この研修を終えた後から、この業務シミュレーションでの「新人からの質問」が、いい意味でいやらしくなりました。今まで放ったままにしていた「この成果物を作る目的や使い道」などをしつこく確認してきたり、途中経過を報告する際に何とか不明点をつぶそうとチャレンジしてきたり。
質問に来る頻度が以前に比べて一気に増えたので、対応する方は大変でした(笑)。
でも、それだけ「仕事の進め方」の大切さが伝わったのだと思います。
また、トレーナー研修では、後日受講者から「『3点セット』を積み上げるような活動は、会社としてきちんと支援したほうがいい。それがES(従業員満足)にもつながるのではないか」というような意見が担当部署に寄せられたという話を聞きました。
そのような事は今までありませんでした。表面的なテクニックとしてではなく、企画側の意図や想いをちゃんと理解してくれたから、そのような意見を言ってくれたのだと思います。
今後、社内の中にこれらの考え方が広まっていき、多くの「教える人たち」と「教わる人たち」の関係が良くなっていけばいいな、と思っています。
ー お忙しい中、ありがとうございました。
株式会社富士通マーケティングのホームページ
文中の組織・数値等は全て取材時時点(2013年10月)のものです